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成功した時の気持ちを常に思い出そう
そうこうしているうち数日が経った。
夕方、いつものようにOLの来店ピーク時間がおとずれる
あやもあわただしく、接客や商品整理にあけくれていた。
でも、自分の着せたマネキンが気になっていた。
あまり売れてなかったのだ・・・
接客の方はだいぶ慣れてきていた。
そんなあやを、リカコはうしろから、そっと見ていた。
夜8時過ぎ、一人の女性が入ってきた。
少しせっかちな感じの女性だ。
あやは、
「いらっしゃいませ。」
となにげなく声をかけた後、しばらく、
その女性と、目を合わせることなく、商品整理をしていた。
もちろん、商品整理はわざとで、しばらく客の様子を伺うためだ。
ずいぶん慣れてきたものだ。(実はリカコの真似だ・・・)
すると、女性が声をかけてきた。
「すみません。ちょっといいかしら?」
あやが接客に応じる。
「はい」
女性は早口であやに話しかける。
「あそこのショーウィンドにある服、いただけますか?」
「あっ、はい」
やった、私が選んだ服だ。
「試着室が奥にありますので、こちらへどうぞ。」
あやは店の奥に案内しようとした。が、
「ええ、ちょっと時間がないもので。このサイズならたぶん大丈夫だから、試着はいいわ。」
そういって、すでに女性は、財布からカードを取り出そうとしていた。
あやはきょとんとしていた。
上下を購入するとけっこうな金額になる・・・。
「そうですか。お客様の体型でしたら、たぶんこのサイズで大丈夫だと思いますが・・・」
あやはそういうのが精一杯だった。
その女性は、早く会計をしてといわんばかりに、あやに視線をやった。
「かしこまりました。もし、サイズが合わないようでしたら、ご遠慮なく、お持ちください。」
と言葉を添えて女性に丁重に商品を手渡した。
「勤めがこの近くだから、そうさせてもらうわ。」
足早に店をあとにする女性に向かって、深々とあやは頭を下げた。
あやの飾ったカットソーとパンツが売れた。が、何とも微妙な感覚だ。
せめて、試着くらいしてくれても・・・。
そんな姿を店の奥からみていたリカコは、思わず、くすっと 微笑んだ。
あやには気づかれないように。